日本におけるアロマとメディカルアロマ
香りを楽しむアロマテラピーは日本にも浸透していますが、「メディカルアロマ」という名前を聞いたことはあるでしょうか?アロマテラピーは知っていてもメディカルアロマのことは何か知らないという方もまだ多いでしょう。
メディカルアロマとは次のように定義されています。
メディカルアロマの定義
アロマセラピーの知識だけではなく心理学や基礎医学、メディカルハーブなど、幅広い知識を用い、精油の機能や効果を心と体の不調に活かす、現代社会にあった心と体の新しいケア方法
引用元:日本統合医学協会、メディカルアロマ検定ホームページ
簡単に言えば、アロマテラピーを心と体のケアに医学などの専門知識と組み合わせて利用することです。西洋医学などの治療の補完医療としても注目されていて、実際に病院でも活用され始めています。
そこで今回はメディカルアロマについての理解をもっと深めるべく、メディカルアロマとアロマテラピーとの違い、実際のメディカルアロマの活用法などについて紹介していきます。「メディカルアロマって何だろう?」と気になっている方はぜひ読んでみてください。
メディカルアロマの歴史

アロマテラピーというと新しい概念のように思うかもしれませんが、実はその歴史は意外に古いのです。日本ではメディカルアロマということでアロマテラピーと区別していますが、そもそもアロマテラピーとは心身の疾病予防や治療のために使われてきた自然療法の一つです。まずはその歴史から紐解いていきましょう。
海外でのメディカルアロマ
アロマテラピーには大きく分けて、医療的な役割として発達したフランス生まれの「メディカル・アロマテラピー」と美容やエステなどで利用されることが中心の英国生まれの「エステティック・アロマテラピー」があります。
フランスやベルギーにおいては古くから医療行為の一つとして用いられていて、現在でも医薬品扱いのため薬局でしか購入することができません。一方、日本においてはもともと医薬品や化粧品ではなく、雑貨扱いであり効能効果を明記することは認められていない状況です。
アロマテラピーとメディカルアロマ
アロマテラピーとは、主に植物由来の精油を用いて香りを楽しみ、心身の健康と美容に役立てていく自然療法のことです。香りを吸うことで大脳に直接刺激が伝えられるため、香りによってリラックスしたり集中力を高めたりなどの効果が得られます。
日本におけるアロマテラピーとは、美容のためや芳香浴としての楽しむことが目的であることが多いです。
一方、メディカルアロマはアロマテラピーの理論を用いることには変わりありませんが、西洋医学、心理学、看護学なども組み合わせて、疾病の予防や治療、健康維持のために用いるという違いがあります。
現在はまだそこまで浸透していないものの、日本でもアロマオイルを用いて補完医療や空間の環境改善などに役立てている医療現場が増えてきています。
メディカルアロマの精油

メディカルアロマに用いられる精油は、一般的なアロマテラピーに使う精油と何か違うのでしょうか。メディカルアロマの精油の特徴についてお話します。
メディカルアロマで使用するのはケモタイプの精油
精油の成分分析をして、特徴的な成分の含有率の違いにより分類された精油のタイプのことをケモタイプと呼んでいます。野菜も風土や環境により味が変わるように、植物もその構成成分が変わります。
メディカルアロマテラピーの発祥の地であるフランスでは、ケモタイプ精油を使い分けて医療に役立てられています。
日本でのアロマの位置付け
日本においては日本アロマセラピー学会が認定した医学的な根拠に基づいたケモタイプの精油があります。しかし、まだケモタイプを区別して使い分けている所はまだ少ないので、化学成分の違いまで考えたケモタイプ・アロマテラピーが今後は必要とされるようになってくるでしょう。
市販されている精油のパッケージを見ると「ct.」(Chemical type=ケモタイプの略)と表示されているのがケモタイプです。さらに専門的なメディカルアロマを追求したいという場合には、ケモタイプ別の効能効果を区別してアロマテラピーに応用すると良いでしょう。
日本で購入することができるケモタイプの精油のメーカーで一番有名なのが、プラナロムです。
アロマを導入している病院
アロマテラピーを実際に治療の補助として導入している病院はまだ多くはありません。
導入している病院の例としては、大阪労災病院ではアロマを取り入れた専門外来が開設されています。カウンセリングの補助として患者さんにリラックスしてもらうためにアロマを取り入れているとのことです。
藤沢市民病院内では外来患者さんを対象にアロママッサージのサービスが行われています。疾病治療におけるストレス緩和に役立てられているそうです。
高槻赤十字病院ではがん末期患者さんの緩和ケアに、アロママッサージを活用しているという報告があります。看護師が直接行うことで患者さんの状態を把握しながらマッサージを施します。アロマによっては禁忌となる疾患があったり、全身状態を確認しながら行なっていくそうです。
メディカルアロマと病気、症状 おすすめレシピ

メディカルアロマを実際の病気や症状の治療に生かすには、どんなアロマをどのような方法で活用していくかということが鍵になります。そこで、具体的に身近な不調にアロマを役立てる方法を紹介していきます。
風邪の諸症状に使えるアロマ
風邪の諸症状を和らげるのに、アロマは対症療法的に用いることができます。
例えば「咳が辛い」「喉が痛い」「鼻水が出る」などのように気になる症状に合わせてアロマを選びましょう。
風邪のひき始めにおすすめの精油 ジンジャー
風邪のひき始めにはウイルスと戦うために熱が出ます。その自然治癒力をサポートするためには、ジンジャーのような体を温める作用のあるアロマがおすすめです。
熱めのお湯にジンジャーを3滴ほど垂らして、足首の上まで足湯を行います。身体が温まって自然と汗をかくので、衣類を変えるなど冷えないように気をつけましょう。
鼻が詰まって苦しい時の精油 ユーカリ・ラディアタ
鼻水がだらだら出る状態からだんだんと鼻づまりに変化してくると、息が苦しくなって睡眠のさまたげとなったり、集中力が低下したりします。この鼻づまりの症状におすすめなのが「ユーカリ・ラディアタ」です。スッキリした香りが特徴でユーカリ・ラディアタには鎮咳作用や抗ウイルス・抗菌作用などもあります。
簡単に芳香浴を行うならば、マグカップを使った方法が手軽でおすすめです。マグカップに熱めのお湯を貼って、アロマオイルを2滴ほど垂らします。デスクや家のリビングなどで、すぐに取り入れられるので鼻づまりが辛い時に試してみましょう。
咳が出てきてしまった時の精油 ティートゥリー
咳は異物を外に追い出そうとする正常な防御反応です。しかし、咳が出続けると体力を消耗し、背部や腹部の筋肉が痛くなってくることも。咳が辛い時には、気管支の粘膜の免疫力を正常化させる作用があるティートゥリーが役に立ちます。さらに、合わせてフランキンセンスのような筋肉をほぐす作用のあるアロマを合わせてトリートメントオイルを作成してみると良いでしょう。
トリートメントオイルの作り方

材料:お好きな精油 1滴と植物油(ホホバオイル、アーモンドオイルなど)5ml
材料を遮光瓶に入れて混ぜ合わせます。目安は1%の濃度ですが、刺激の強い精油を使う場合には0.5%以下まで薄めて使いましょう。
女性ホルモンを整えるメディカルアロマ
アロマテラピーは女性ホルモンのアンバランスによる不調も得意分野です。女性ホルモンは月経周期に伴って変動したり、更年期に差し掛かってくるとホルモン量が減少することで身体が追いつかなくなります。その結果として、さまざまな不調を引き起こしてしまいます。
女性ホルモンを整えるアロマにはいろいろな種類があり、種類によって効果に違いがあります。どんな症状に悩んでいるのかによってアロマを使い分けましょう。
ただし、アロマの中でもクラリセージのように乳がんなどの女性ホルモンが関わる病気の方や、ローズオットーやゼラニウムのように妊娠中には使用禁忌のものがあります。初めての使用前にはよく確認することが大切です。
月経痛をなんとかしたい時の精油 クラリセージ
月経痛は子宮が収縮して子宮内にある月経血の膜を剥がすときに起こります。筋肉が痙攣すると痛みが強くなるため、筋肉の緊張を抑える鎮痙作用や鎮痛作用のある精油を選びましょう。
おすすめの精油としては「クラリセージ」があります。女性ホルモンに似た作用を持つだけでなく、筋肉を緩め緊張を解きほぐすような作用もあります。上記の方法でマッサージオイルとして取り入れてみましょう。他、ローマンカモミールやラベンダーなどを使っても良いでしょう。
生理前のイライラ期を乗り越えるなら 精油 ローズオットー
生理前の2週間は女性ホルモンの中でも黄体ホルモンが優位になってきます。このホルモンはむくみやイライラ、ほてりなどの不調を引きおこし、この期間のことをPMSといいます。
PMSに起こりがちな不安な気持ちやイライラを吹き飛ばすには、「ローズオットー」がおすすめです。トリートメントオイルにしても、芳香浴として用いても効果があります。他にはゼラニウムやラベンダーも活用できます。
アトピーに使えるアロマ、精油
アトピー性皮膚炎はアレルギー反応が原因となって起こります。ストレスによって悪化しやすく、かゆみと赤みを繰り返すことが特徴です。アトピーの方は肌が弱いのでアロマオイルを肌に直接用いるときには注意しながら用いることが大事です。
「かゆみを早く止めたい!」という場合に役立つのが、「ジャーマンカモミール」です。昔から皮膚のケアに用いられてきた薬草で、抗炎症作用と抗アレルギー作用があります。アロマの中でも比較的肌に優しい精油で、トリートメントオイルとして直接付けるとかゆみを抑えてくれます。
そのほかに、精油の中にはコーチゾン様作用といって、ステロイドと同じ様な作用があるアロマもあります。
それが下記3つ
こちらもブレンドして試してみるのも良いかと思います。
万能の精油
精神、肉体へと共に働きかける効果がある精油の代表がラベンダーです。
そのラベンダーの中でも種類がいくつもあるのですが、代表的なのがラベンダーアングスティフォリアです。
色んな用途で使えるので、一本持っておくと重宝しますよ。
メディカルアロマを学ぶ
メディカルアロマのことが少しわかってきたのではないかと思いますが、もっと実際には奥深い世界です。アロマテラピーをもう少し深く学んでみたいなと思った方は、ぜひこの機会にアロマの勉強を始めてみてはいかがでしょうか?
独学で学ぶこともできますが、書籍だけでは情報や技術が限られてしまいます。メディカルアロマを応用するときにはマッサージなども学ぶ必要があるので、できれば講座で勉強する方が習得しやすいでしょう。そこで実際にどんな講座を選べば良いか?という疑問にお答えするため、具体的なアロマの講座について紹介していきます。
アロマの協会、スクール
日本にはいくつかのアロマ協会がありますが、一般的に知られているのが「日本アロマ環境協会」ですアロマテラピー検定を実施しているので、まず勉強を始めるときの目標として検定取得を目指す方が多いようです。さらにアロマテラピーアドバイザー、インストラクターなどの資格取得を目指すことも可能です。認定スクールで実技も含めて受講して試験に合格すれば、実際に資格を活かした仕事にも就きやすくなります。
また、メディカルアロマに限定するのであれば日本医学統合協会が主催しているメディカルアロマ検定という検定もあります。最短で3ヶ月あれば資格取得も可能です。
日本におけるメディカルアロマの協会で最も有名なのが、NARDです。
本格的に専門知識をしっかりと学びたい。
メディカルアロマセラピストとして、活躍したい。
という方は、NARDでしっかりと基礎を学ぶのがおすすめです。
通信講座
アロマの資格を取得したいけれど、通学する時間が確保できない、遠くて通えないという人には通信講座を使う方法があります。
職業として学びたい訳ではなく、ご家庭で御家族や自分のために使いたいというレベルであれば、通信講座で自分のペースで学ぶのもおすすめです。
専用のテキストやDVDなどを利用したり、最近ではe-ラーニングで手軽に受けられる講座も増えてきています。自分の都合に合わせて好きな時間に好きな場所でアロマの勉強ができるので、無理なく資格取得を目指すことができます。
MAA認定メディカルアロマアドバイザー通信講座
ルネサンス式英国メディカルアロマセラピー通信講座